2-(06)類魂

霊魂の共同体

「生まれ変わり」の部分再生のところで挙げた「類魂」という概念は、スピリチュアリズム霊学の中でも重要な概念と言えるものです。

霊魂というものは、すべてがばらばらに存在しているわけでもなく、またすべてがじかに「一」に帰するわけでもありません。地上の肉体に、家族・親族・部族・民族といったグループがあるように、霊魂もレベルの異なる霊から構成される様々なグループに所属しています。(肉体のグループと霊魂のグループは一致するわけではありません。)
地上に生きる霊魂(つまり人間)は、それぞれ、守り導いてくれるより高位の霊的存在を持っています。守護霊、指導霊と呼ばれる、私たちにとって「ありがたい」存在です。そしてその高位の霊も、さらに上の世界にいる高級霊から、指導・守護を受けています。このような高級霊(「本霊」と呼ぶこともあります)は、その配下にたくさんの霊魂(十単位から千単位まで様々)を「持って」います。「持って」と「」をつけたのは、単に指導・育成しているという、個々が独立した関係ではなく、もっと融合した関係だからです。あえて言えば、一つの霊魂は上位の霊魂の「分霊」ないし「部分」(梅原伸太郎氏の表現を借りれば「支店」)のようなものである、ということです。私たちは、ある本霊という大会社の、支店の、営業所の、さらに出張窓口のようなものだと譬えればわかりやすいかもしれません。
私たち個々の霊魂の体験は、個々の体験であると同時に、この類魂全体にとっての体験でもあります。先の例で言えば、出張窓口の売り上げは、会社自体の売り上げになっていくということです(ちょっと品がない表現ですが)。

地上にいる間、人間は類魂に気づくことはほとんどありません。一つ上の「幻想界」でも、まだ判然としないようです。霊魂が類魂に気づくのは、マイヤーズ通信によれば、もう一つ上の「色彩界(ないし形相界)」だとされています。ここは私たちの守護霊・指導霊が活動している領域です。そして「本霊」は、さらに上の「火焔界」の存在とされています。

霊魂は高次になっていくほど、魂の相互浸透性を獲得していきます。「色彩界」では、類魂を知り、それぞれの体験が理解できるようになります。そして「火焔界」では、霊魂は、多くの類魂(配下にある類魂も同次元にいる類魂も)のあらゆる体験を、自分のものとして知覚できるようになります。一個の魂の経験する感情生活は、同類の他の魂にとっても「自分の」感情生活となります。個我の壁は取り払われ、「多即一」「一即多」の状態となります。
このような段階では、もはや再生といったことは必要ありません。未解決の課題があれば、それをより若い霊魂に託し、教導しつつその経験を類魂の共同記憶の中にフィードバックすればよいわけです。これが部分再生の基本原理です。先ほどの例で言えば、支店は自ら市場に赴くことなく、営業所や出張窓口にプランを渡して営業させ、自らは全体の業務を統括する、ということになるでしょうか(どうも世知辛い比喩になってしまいますが)。

私たちは孤独で生きているわけではありません。どんな人にも、意識では知られないにしても、守り導いてくれる守護霊がいます。守護霊は私たちと共に生きています。それは単に保護・指導ということではなく、守護霊自身の霊的生でもあるのです。私たちは、自分の生を生きると同時に、守護霊や本霊を含む、壮大な類魂の生を生きているのです。私たちの体験は、類魂の共同記憶を豊かにする体験です。私たちが喜び、あるいは悲しむ時、守護霊も本霊もそれを共に体験します。これは何よりの「救い」ではないでしょうか。

ソウル・メイト
同じ類魂のグループに所属し、共に関係しながら生きる人間もいます。
このことは、前世療法の中で発見され、「ソウル・メイト」という流行語まで生み出しました。
前世療法の中では、現在の夫が前世の父であったり、きょうだいが前世の夫婦であったり、さらには前世で自分を殺した殺人犯が現世の夫になっていたり、と、様々な「役割重複」が報告されています。ただしそれらが真実かどうかは不明です。時には、似たような人物原型を違う人物にあてはめているだけではないかと疑われるものもあります。
前世療法の流行とともに、ちまたでは「ソウル・メイト」という言葉が流布しました。これはもっぱら、「宿命の恋人」といったロマンティックな概念に収束しているようで、占いや過去生リーディングや前世想起催眠などを使って、どこかにいる「赤い糸で結ばれた理想の恋人」をやっきになって探している人も多いようです。
確かに、同じグループに所属する魂が、一緒に何度も生まれ変わり、互いに重要な人物として生きる、ということはあるようです。しかし、それは、必ずしも「宿命の恋人」ではなく、時には激しく対立する相手だったりもするのです。
ただし、ごく稀に、互いに相補って一つの魂となるような、二つの霊魂が生まれる場合もあるようです。こういう魂をマイヤーズ通信は「アフィニティ affinities」と呼んでいます。しかし、こうした魂は、出会えれば至福ですが、離れている時は非常な孤独感を味わうものなので、なかなか苦悩が大きいようです。また、あまりにも二人で完結してしまい、他を顧みないために、類魂から孤立してしまう危険性もあります。
ぴったりの仲間や「宿命の相手」がほしいという心情は、自然な、本質的な願望ではあるでしょうが、過度に他者に依存するのはあまりいいことではないでしょう。自分を深く愛してくれる最大の存在は「守護霊」であり、それに連なる霊界の類魂であることを心に銘記して、個我として自立していくことが、霊的成長にとっても望ましいことだと思われます。