3-(02)電子機器による霊界との交信 ――インストゥルメンタル・トランスコミュニケーション

1980年代以降、臨死体験や前世療法とはまったく別の領域で、死後存続研究の新たな展開が起こっています。これまでの霊媒による交信ともまったく別の、きわめて現代的な方法で、霊界と交信するというものです。それが、電子機器による霊界との交信(インストゥルメンタル・トランスコミュニケーション Instrumental Transcommunication=ITC)です。1980年代からヨーロッパやアメリカで大きな広がりを見せ、多数の実験研究集団が交信成果を蓄積・発表しており、国際学会も設立されています。
これについては、パット・クビス&マーク・メイシー/冨山詩曜&臼杵真理子訳『あの世の存在(いのち)に活かされる生き方』徳間書店、1999年(Dr. Pat Kubis & Mark Macy, Conversation Beyond the Light, 1995, Griffin Publishing)という本で詳しく紹介されています(残念ながら現在は絶版のようです)。まずはそれによって、概史を紹介します。詳しくは、冨山氏のホームページ、国際ITC学会のホームページ(英文)をご参照ください。
超常的録音・録画の歴史
録音機に「見えない存在」の声が混入するというのは、ITCの方法が確立する前から(そして今も)、偶発的に起こっていた(いる)現象だと思われます(「心霊写真」があれだけあるわけですから、「心霊録音」も「心霊ビデオ」も研究とは別に一般的にしばしば起こっていると推定できるでしょう)。
早くは、1901年、アメリカの民族学者ヴァルデマール・ボグラスが、ドラムを叩きながら祈るシャーマン(シベリアのチョウクチ族)を録音したところ、それに応える複数の霊の声がテープレコーダーに記録されたことを報告しています。
1920年代、発明王トーマス・エジソン(1847-1931)は、死後の世界との交信を試みようとしていました。彼は『サイエンティフィック・アメリカン』誌のインタビューで次のように語っています。
《もし私たちの人格が死後も存続するならば、……この世を去った人たちが、ここに残された人たちとの通信を望むだろうと結論づけるのも妥当なことです。……もしこの推論が正しければ、あの世で生きている人格によって影響を受ける、つまり動かされたり操作されるほどに精巧な機器を開発することができたなら、その暁には何かが録音されるはずです。》(1920年10月30日号)
しかし、エジソンの試みは、少なくとも表立っては成功しなかったようです。
1952年には、ヴァチカンの法王庁アカデミー学長ジェメリ神父と物理学者・哲学者でもあるエルネッティ神父が、グレゴリオ聖歌を録音中、ジェメリ神父の他界した父親からの音声を録音しました。二人は時の法王ピオ12世に報告したところ、法王はこれを否定しなかったということです。ただしこのことはその後30年以上、公表されませんでした。
1956年、アメリカ、カリフォルニアのスザレイとペイレスがテープに超常的な音声を録音することに成功、アメリカ心霊研究協会に発表しました(59年冬号)が、反響はほとんどありませんでした。
そして1959年、スウェーデンの映画プロデューサー、フリードリッヒ・ユルゲンソンが、鳥の鳴き声を録音している時に他界した母親の声を録音します。彼はこれによって研究を開始し、その後数百という超常的な声を録音しました。そして1964年に『宇宙からの声』『死者とのラジオコンタクト』という書籍をスウェーデン語で刊行します。ユルゲンソンは時の法王パウロ6世と知己だったっため、ヴァチカンもこれに興味を持ち、研究を開始しています。
1967年、このユルゲンソンの本のドイツ語訳が刊行されると、それに触発され、ラトヴィアの心理学者コンスタンティン・ラウディヴが研究を開始します。ラウディヴは、ホワイトノイズ(ザーッという雑音)を利用することで、音声が発生(加工)しやすくなることを、霊界側から教授され、それにより、7万5千以上の超常的音声録音に成功します。そしてその成果を1971年、『ブレイクスルー――死者との電子工学的コミュニケーションの驚異的実験』として刊行し、Electronic Voice Phenomena=EVPとして理論化します。ラウディヴの本はヨーロッパに大きな反響を巻き起こし、追試する実験者が輩出、以後、こうした現象は「ラウディヴ・ヴォイス」と呼ばれるようになりました。
このころ、「サイキック・ニュース」の編集長で、かのシルバー・バーチの霊信を媒介する霊媒であったモーリス・バーバネルは、「私たちの将来は、普通は人間の五感で感じることのできない、霊界から発せられる振動や放射を記録できるような機械に大きくかかっている」と表明しています。
こうした動きは当初アメリカには伝わらなかったようですが、1977年に、アメリカの資産家ジョージ・ミークと霊能者ウィリアム・オニールの共同実験によって、霊界との通信実験がようやく開始されます。1982年には、1968年に他界したNASAの科学者ジョージ・ミュラーとの20時間以上に及ぶ交信が発表され、アメリカでもEVPの実験がさかんに行われるようになります。
ここまでの研究は、音声録音によるものでしたが、1980年代後半になると、領域はさらに拡がります。
1986年、ドイツのEVP実験者クラウス・シュライバーが、音声による指示に従ってテレビをつけたところ、他界した愛娘の映像を受信します。
同じく1986年、ルクセンブルグでトランスコミュニケーション研究所(CETL)を設立し、多くの成果を得ていたマギー&ジュール・ハーシュ=フィッシュバッハ夫妻が、ビデオカメラで超常的映像を受信。以後、CETLを始めとするいくつかの研究所で、生前の人物を同定できる画像が続々と受信されるようになります。またCETLでは、コンピューターに文書が超常的な方法で受信されるようにもなり、まとまったメッセージや情報が入手されています。
ITCのメリット
これらは、19世紀に多数出現した霊媒が様々な霊界の情報を伝えたのと、基本構造は同じと言えます。霊媒の喉や手を使う代わりに、電子機器が操作され、メッセージや情報が伝えられるわけです。内容も、死亡した人間が遺族に、「あちら」で生きていることを伝えるものや、「あちら」の「生活」の様子を報告するものなど、基本線は変わりません。
電子機器を使うメリットとは、どこにあるのでしょうか。まず第一は、霊媒による交信の場合、霊媒の意識的・無意識的歪曲があるのに対し、電子機器はそれが回避できるということがあります。これはもちろん非常に意義深いことですが、電子機器による情報伝達でも、かなりの困難さが伴い、雑音や歪み、また文章の不完全などが起こりやすいようで、そういう意味では、完璧な(現象的にも精神的にも)霊媒の方が、優れている場合もありそうです。
第二は、画像が送れるということです。これは確かに霊媒では不可能なものです。ただし、霊界での現実というものは、この世の物質的現実とは異なりますから、そこに映し出された画像が、そのままあの世の現実そのものかというと、話は微妙です。通信上の技術的困難さもあるでしょうし、そもそも受け取るのはこの世の物質媒体ですから、この世の認知力を超えたあの世の素晴らしさを伝えるものとはなかなか言えないようです。
第三は、霊媒という特殊能力に頼る必要がなくなり、霊界通信が万人に開かれる可能性が予測されるということです。ただし、これも手放しで誰もができるというわけではないようです。交信が成立するためには、やはりそれにふさわしい霊的エネルギー場が必要で、一人で行なう場合には当人の霊的素質が要求され、グループで行なう場合は、否定的な考えを持っている人が混ざっておらずメンバーの意気が合っている必要があるなど、なかなか難しい条件があるようです。これは19世紀の「テーブル交霊会」と同じです。(これらの画像は国際ITC学会のホームページ上で見ることができます。)

ITCの伝える霊界情報
ITCによって送られてきた霊界の様子や構造は、マイヤーズ通信を始めとしたスピリチュアリズムの霊界説明とほぼ同じです。この世界を第一界とすれば、第二界は「アストラル界低層」=マイヤーズ通信の「冥府」、第三界は「アストラル界中層」=マイヤーズ通信の「幻想界」、第四界は「アストラル界高層」=マイヤーズ通信の「形相界」、第五界は「心因界」=マイヤーズ通信の「火焔界」、第六界は「天界」=マイヤーズ通信の「光明界」、第七界は「宇宙界」=マイヤーズ通信の「彼岸」、とされています。
通常の人が死後赴くのは第三界であり、マイヤーズ通信が、「幻想の国、常夏の国」と呼んだ一種の半・理想的世界です。すべての事物は想像を超えた美しさと完全さを持ち、花や蝶や自然も存在し、経済的問題や世俗的犯罪はなく、そこで人々は、好きなことに好きなだけ打ち込むことができるとされています。そこの映像も伝えられていますが、やはりこの世の媒体で表現されるので、いささか作り物めいた感じがすることは否めません。
CETLの得た情報によれば、ITCの送り手たちは、この第三界にある「タイムストリーム」という研究所から、通信を送っているとされます。「タイムストリーム」は電子機器による交信を専門に研究・実践している研究所で、そこにはエジソン、キュリー夫人、フォン・ブラウン、アインシュタイン、コンラート・ローレンツ、コナン・ドイル、ジュール・ヴェルヌ、そして他界したITC研究者である、ユルゲンソン、ラウディヴ、シュライバーらが、いかにして地球と連絡を取るか、努力を続けているということです。なお、この研究所を統括しているのは、「地球とパラレルワールドの関係にある惑星ヴァリド」で地球時間1948年~1987年に生きた「スエジェン・サルター」という女性だということです。

実践の方法
興味のある方に、ITCの一つの実践法をご紹介します。これは、日本においてITCの講演会が行われた時に、ブラジルの研究者ヌネス氏が公開教授したものです。装置は比較的安価・単純で、普通のテーブルの上で充分収まる規模です。
まずは、ラジオを3台用意します。1台はFM、もう1台はAM、最後の1台は短波で、それぞれホワイトノイズを発生させます。各周波数帯が受信できるものであれば、安価なもので問題ありません。チューニングはできるだけ各放送局の周波数から遠く、安定した細かい雑音が引き出せるところを選びます。これは霊界側が、ノイズのエネルギーを利用して音を作りやすくするためです。
次に、赤外線灯と紫外線灯を用意します。電球の専門店で入手できます。ただし、紫外線灯は強力な「ブラックライト」を使用すると危険(直接見ると失明する)ですので、弱い、紫外線が出る蛍光灯を利用すること。これもエネルギーの供給になるそうです。
最後は録音機です。内蔵マイクではない、通常のマイクを使用します。特に高価なものは必要ありません。これを録音機(MDでもCDでも原理的には問題ないはずです)に接続して、正面には3台のラジオを据え、マイクの先端から少し離れた部分に紫外線、赤外線が当たるようにします。マイクは振動音を拾わないよう、柔らかな布などの上に置き、きちんと固定します。
装置はこれだけです。実証性を高めるためには、未開封のできるだけ録音時間の短い(使い捨てにするため)テープを使うのがよいでしょうが、こだわる必要はありません。
ノイズを流し、ライトをつけ、録音を始めます。ヌネス氏は「No prayer, no chant」(祈りも賛美歌も必要ない)と言っていましたが、ITCの先駆者たちは、実験者(たち)が心を集中し、交信したいという真摯な思いを持つ方がよいと言っています。
録音は15分とか30分とか時間を決めて、できるだけコンスタントに、決まった時刻に行なうことがよいとされています。
録音されたかどうかは、聞き直す必要があります。これは案外しんどい作業です。通常は、当初は録音されても一瞬ですから、聞き耳を立てて、それとおぼしきところを何回か聞き直す必要があります。データのコンピュータ処理ができる人なら、異常箇所を見つけることは楽でしょう。
なお、画像を受信するには、テレビ画面に向けてビデオカメラを設置し、やはりホワイトノイズを発生させます。そしてカメラが捉えたノイズ信号をテレビに戻すという循環回路を作り、それを同時に録画する、という方法を取るようです。
正直に告白しますと、筆者たちは、試みて一瞬のそれらしき声を録音できましたが、持続できず挫折しました。熱意と根気をお持ちの方、どうかチャレンジしてみてください。

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